「わたしと一緒にガンジス川を上り、シバに会いにヒマラヤへ行こう」
リシケシで沈黙の修行をしていたある日、ガンジス川のほとりでケダルギリ・ババが話を持ちかけてきた。
「了解」
おれは無言でうなずいた。
ヒンドゥー教の神話では、ガンジス川はシバ神の髪の毛から生まれたらしく、この川の上流ヒマラヤのケダルナートという山にシバは住んでいるという。
普段は寡黙なケダルギリ・ババも一旦シバ神の話になると、少年のように目を輝かせ情熱的に雄弁になる。
ケダルギリや多くのババ(出家僧)たちを惹きつけるヒンドゥーの神々の世界に興味も湧いたし、なんせケダルギリと二人旅なんて、楽しそう!
数日後、沈黙の行を終えると、おれたちはまだ薄暗い早朝、ローカルバスに乗ってヒマラヤへの旅に出た。
ガンジス川は、はるか崖の下に流れている。バスはかなり危険な箇所も平気で走ります。
もちろん予定していた直行バスには乗り遅れたので、途中から乗り合いタクシーを乗り継ぎながら北上した。
乗り合いタクシー
夕方、ようやくたどり着いたのは、ヒマラヤの「ケダルナート」のふもとにある小さな村、トリヨギナラヤン。
この村は神話にも登場する。神話ではシバと奥さんのパルバティはこの村で結婚したという…
車もバイクもインターネットもスマホもない、静寂に包まれた、まさに神話の中にタイムスリップしたような世界が広がっていた。
この旅がきっかけでインドの村の世界にハマり、その後のインド滞在中は、焦がれるように村々を訪ねて行くようになった。
宿のテラスから見た早朝の村の様子↓