再会
「また会えて、うれしいぜ!」
晴天の空の下、妹分の旅人 ニューヨークのヘレンがスタリグラッドの港に現れた。
東京以来、1年ぶりの再会だった。
日に焼けたヘレンは去年出会った時よりさらにワイルドになって、瑞々しい自由な旅の匂いをしていた。
出会い Tokyo
2006年の初春の日曜日、彼女は原宿の人混みの中『ロンリープラネット(旅のガイドブック)』を覗き込んでたたずんでいた。
「どこに行きたいんだい?」
とおれはその子に声をかけた。それがヘレンとの出会いだった。
「おれはここに4年も住んでるんだぜ。任せときな!」
おれは彼女が探していた表参道の路地裏にあるアート系の本屋まで案内することにした。
そして数分後、
「‥わりぃ。おれも道に迷ちゃった」
人ごみを避け、しばらく裏道を歩いてるうちにおれも道に迷ってしまったのだ。
おれたちは大笑い。
道すがらの話が楽しかったのでそんな事はどうでもよくなってた。
ヘレンはその三日前にニューヨークを旅立ったばかりで、おれたちは夢中になってお互いの旅への想いを話した。まるで旅人の兄妹ができたような気分だった。
その後しばらく日本を旅したヘレンは、東京に戻るなりうちに転がり込んできた。
おれも猫のように彼女を自由に出入りさせた。
物価のバカ高い日本を旅するのが大変なのは知っていたから、「東京にいる時はいつでもこいよ」と伝えていたのだ。
中国系の彼女に翻訳の仕事を手伝ってもらったり、時間のある時は一緒に飲みに出かけたり、おれたちは数週間の着かず離れずの共同生活を楽しんだ。
彼女が日本を去ったのち、おれも追うように旅に出た。おれたちが生活したあのアパートは今では見知らぬ人が住んでいることだろう。
そして一年後、おれたちは想像もしていなかった場所での再会を果たした。
スタリグラッドにて
「旅をするならもっともっと荷物を減らすべきだ」
去年、旅の荷物が多かったヘレンに対しておれは先輩風吹かせていたけど、今回は逆だった。
1月、ニューヨークから再び旅に出たヘレンは小さいバックパック一つの荷物。
それに比べて撮影と編集の機材に囲まれて旅している今回のおれは、まるで「生活者」のようだ。
とにかく彼女が滞在している間おれは編集作業を休み、再び始まった共同生活を楽しむ事にした。
最初の数日、おれたちは秘密のビーチ(夏にしか来ない金持ちの別荘の私有地なんだけど‥)でキャンプ生活を送った。
素っ裸で泳いだり、ヨガをしたり(ヘレンはここに来る前にタイでおれの先生からヨガを習っていた)、本を読んだり、たき火をして過ごした。
夕方にはふたりして沈黙の中、真っ赤に沈む太陽を見つめていた。
言葉や思考もなく「いま」があった。
どこまで続いてゆくのかこの「時間」。とにかく二度と帰ってこないんだ「いまこのとき」は。
ってな感じ。
スタリグラッドに戻ったら、今度は町の仲間たちとオリーブ畑の中でたき火パーティー。
嬉しい仲間、おいしい料理、気持ちのいいジャムセッション。他になにが必要っていうんだ?
こうしてヘレンとの時間はまたたく間に流れていった。
別れ
「”運命” だったらまたどこかでな」
ヘレンは出会ったときと同じフェリーに乗ってスタリグラッドを去っていった。
おれはすぐに「生活」に舞い戻る事ができず、海辺のテーブルでビール飲みながら今日も変わらず沈んでいく夕日を眺めていた。
でもそれはビーチで見ていた時と全く違う夕日に見えた。
"Nice to see you again!"
Under the blue sky, Helen, my soul sister from New York, showed up at the ferry port in Stari Grad.
Since she left Japan last year, Already 1 year passed.
She becomes more wild and free and open minded.
Tokyo 2006
The beginning of Spring, she was standing alone and watching " Lonely Planet" at middle of the street in Tokyo.
"Hey, where do you wanna go?"
I asked her. That's how we met the first time.
"Don't worry man. I've been living here for 4 years"
I decided to guide her to the art gallery where she wanted to go.
But after while, I confessed,
"You know, I lost the way as well"
We laughed.
It didn't matter We had a good time on the way.We became a friend somehow.
I felt like I got a sister of traveler.
After while, Helen came to stay at my apartment.
I let her stay freely like a cat.
Japan is too expensive to travel. So I was telling her "Whenever you are in Tokyo, you can use my place"
I enjoyed the life with her.
Then, Stari Grad.
"You should travel with much less stuff"
Last year, I gave her some advices as a traveler.
But this time was opposite.
She is traveling with small back pack.
But I'm traveling with a lot of stuff for filming and editing.
Anyway I decided to stop my editing work during she stay in this island.
First few days, we went to "the secret beach" for camping.
Naked, Swimming, Doing Yoga(Helen has studied Yoga from my teacher in Thailand), Reading Book, taking nap, Making fire and so on.
At evening, We were siting by the sea and just gazing the sunset with empty mind, realized how every single moments are precious.
Today never comes back. Every moments never come back.
In Stari Grad, We had a party with friends.
In the olive field, made fire. Nice people, Good foods, fine Jam session and vibes. What else do you need?
Time to detach
" If it's the fate, see you somewhere"
Helen left by same ferry she came.
After she left, I always feel bitter taste of loneliness.
I don't like it. It's always hard to come back to the daily life.
I sat on the chair by the sea and took beer.
And observed the sunset as we did at the beach.
But it seemed different.